本校の自立活動について
概要
本校は肢体不自由児の特別支援学校で,小学部,中学部,高等部があり,12年間を通して
児童生徒一人ひとりの自分らしい生き方や社会参加をめざした教育活動を行っています。
児童生徒の障害の重度・重複化,多様化が顕著となっており,医療的ケアを必要とする
児童生徒が約75%在籍し,常駐の2名の看護師とともに,隣接の徳島赤十字ひのみね総合
療育センターとの連携を深めた取り組みを行っています。在籍数の約40%が通学生で,他の
児童生徒は,徳島赤十字ひのみね総合療育センターから通学しています。
自立活動とは?
自立活動は,特別支援学校の教育課程に特別に設けられた指導の領域です。
一人ひとりの個々の児童生徒が自立を目指し,障害による学習上または生活上の
困難を主体的に改善,克服するために必要な知識・技能・態度及び習慣を養い,
心身の調和的発達の基盤を培うものです。(学習指導要領より)
本校の自立活動
本校では,運動障害のある児童生徒が,自己肯定感をもち,主体的に意思表示や
意思決定を行い,人や物とのかかわり,地域社会とのかかわりを深めていけることを
めざしています。
自立活動の時間の指導内容は,日常生活や学習場面における実態把握,保護者の
ニーズをもとに,自立活動の指導項目を関連づけて選定します。
関係機関との連携について
徳島赤十字ひのみね総合療育センターを中心として医療や関係機関との連携を
密接にし,一人ひとりの児童生徒が,安心・安全に学校生活を送り,生きる力を培う
基盤を作ることができるように努めます。
専門性の向上についての取り組み
教員の専門性の向上を図るために,外部専門家による研修会やコンサルテーション,
教材製作や教材紹介,事例検討会を行っています。また,ICF(国際生活機能分類)の
視点やキャリア教育の視点を重視した授業づくりをすすめています。
ICFとICIDH
・ICFは,WHO(世界保健機関)の総会で,2001年に採択された「国際生活機能分類」のことです。それまでは,1980年に採択された「国際障害分類」によるICIDHの考え方が主流でした。
・ICIDHは,障害を,疾病・変調による,機能・形態障害→能力障害→社会的不利という3つの側面でとらえます。子どもができないことをできるようにすることや,劣っている能力を高めることで,社会的不利が軽減し,自立が促進されるという考え方です。
・ICFは,人が生きるということ全体をとらえたもので,障害は,「機能障害」や「活動制限」「参加制約」としてあらわれ,健康状態や環境因子・個人因子と相互に影響しあっているとします。参加を前提として,環境のあり方等も含めて,一人ひとりの子どもの支援・援助を明らかにしていくという考え方です。実際のICFは,細かいチェックリストがあり,チェックリストにあてはめて評価していくものですが,本校では,ICFの関連図をもとにした考え方を取り入れています。
引用文献:「子どもの見方がかわるICF」(クリエイツかもがわ)
ICF関連図
ICFで考える「人が生きるということ」
・ICFは,英語を翻訳しているためわかりにくい表現があるように思われますが,例えば,
生活機能の,「心身機能・身体構造」は,身体(生命)があること
「活動」は,生活すること
「参加」は,社会的な役割のある人生を送ること
つまり,生きて,生活して,人生を歩むことと考えられます。
ICFは,障害のある人に限らず,すべての人に通用するものです。
引用資料:「ICFの視点からとらえた学力向上について」
H23年6月学力向上推進委員会研修資料
特別支援学校におけるICFの視点の活用とは?
自立と社会参加をめざした指導の一層の充実に向けて
①障害のある子どもの生活のしにくさを多面的・構造的な視点から理解した支援
②特別支援教育に求められる多職種間の連携への活用
③「活動・参加」により,生活や社会参加,自立という中立またはポジティブな視点からの
理解・支援
自立活動とICFの関連は?
・特別支援学校学習指導要領解説自立活動編では,ICFの障害のとらえ方と自立活動の指導についてまとめられています。
・自立活動の目標は,「個々の児童生徒が自立を目指し,障害による学習上または生活上の困難を主体的に改善,克服するために必要な知識・技能・態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う。」(学習指導要領)です。
・障害による学習上または生活上の困難を,ICFの「生活機能」=「心身機能・身体構造」「活動」「参加」=にあてはめてとらえることができます。そのことにより,個人因子や,環境因子とのかかわりを見て実態把握を行い,児童生徒の状態を多面的・構造的にとらえることができます。また,学習上または生活上の困難を改善・克服するための指導の方向性や関係機関との連携を考えることができます。
参考・引用文献:「特別支援学校学習指導要領解説」自立活動編(平成21年6月)
「障害の重い子どもの指導Q&A」(ジアース教育新社)
授業におけるICFの視点とは?
・「生活機能」=「心身機能・身体構造」「活動」「参加」は,児童生徒の学習・生活の状況を表します。「環境因子」は,学習環境の整備,教材・教具の工夫,教員のかかわりの見直しを表します。「個人因子」は子どもの願い・希望等も含まれます。
・環境因子を見直すことで,わかりやすい授業作りや意欲や主体性を引き出すかかわりができるようになり,児童生徒の学習・生活状況(生活機能)を改善することができるということです。
・つまり,ICFは,自立活動の指導に欠かせない視点であるといえます。
取り組みの紹介
自立活動研修報告会
今年度,全教員で取り組んだ自立活動に関する指導について,外部専門家の先生方や教員によるOJTを活用した助言等を,小学部と中・高等部に分かれて共有しました。
助言をいただくことで,個々のケースに応じた指導のポイントや実態把握の大切さを学ぶことができました。
映像も交えた報告会では,具体的な場面をイメージしながら共有する機会となりました。
自立活動研修
今回の研修は「身体の動きに関するQ&A」と題して,徳島赤十字ひのみね総合療育センター リハビリテーション課長 磯部かおり 氏からお話をお聞きしました。磯部先生には1つ1つの疑問に対して,詳しくお答えいただきました。
教えていただく前に,まず教員自身で考える時間を設けて,ペアで確認し合いました。活発な話し合いの後,骨格模型を用いて磯部先生が説明してくださったり,身体の動きを見せてくださったりしながら丁寧に教えていただきました。
自立活動の指導を行う上で大事にしなければならない視点が随所に含まれている,とても参考になるお話でした。
社会人講師の来校
今年度も理学療法士,言語聴覚士,作業療法士,視能訓練士,コミュニケーションスペシャリストの先生方に自立活動の授業に参加していただき,授業力の向上に取り組んでいます。
外部講師の先生方の児童生徒に対する実態把握の視点や指導方法などを参考にしながら,自立活動の指導に活かしています。教員にとっても児童生徒達にとっても,よい学びの機会となっています。
令和4年度 自立活動ミニ研修
今年度も校内の教員が講師となり、身体の動きや摂食指導、コミュニケーションなど自立活動の指導に関する内容をテーマにした自立活動ミニ研修を行っています。
今回は希望する15名の教員を対象に、口腔ケアの仕方について学びました。
伝達者の教員、参加した教員が共に学び合える研修会を目指して取り組んでいます。
おもちゃ病院からスイッチのプレゼント
おもちゃ病院のおもちゃドクター大西春男様から,今年もいろいろな手作りスイッチをいただきました。
その中に,2穴式のiPadタッチャーもありました。
本校には1穴式のものしかなかったので、活用の幅が広がりそうです。
早速、昼休みに光って歌うクリスマスツリーをスイッチでON!
楽しく遊ぶことができました。
9月 社会人講師の来校
今年度から、日本赤十字ひのみね総合療育センター リハビリテーション課作業療法係長 郡 千春 氏を本校の社会人講師として迎え、いろいろなアドバイスをいただいています。
今回も、授業に参加していただき、手の操作に関する指導方法について具体的に助言をいただきました。
握力を最大限に発揮する雑巾の絞り方や、手を使う前の準備体操などたくさん学ぶことができました。
自立活動に関するケース会
7月から夏休みにかけて,児童生徒一人一人の自立活動の指導について話し合いました。
実態や3年後の姿などから中心的な課題を検討し,そのために必要な指導目標や指導内容について,いろいろな意見を出し合いながら考えました。
1学期の指導を見直しながら,2学期からの指導に向けて準備する機会となりました。
令和3年度 夏休み親子スマイル教室
夏休み親子スマイル教室は,「夏季休業中の児童生徒の健康維持や日常生活に役立つ内容について外部講師を招き学ぶ」ことを目的として開催しています。昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響で開催できませんでしたが,今年度は感染症対策をし,ひのみね総合療育センター 言語聴覚係長 野津真理先生を講師にお招きして,親子4組と教員13名が参加して行いました。
「おいしく安全に食べよう」について,講演と実技研修を行いました。講演では,安全に食べるための姿勢,食形態,介助の仕方を学んだり,実際に参加者も食べにくさの体験をしたりしました。
また,実技では,保護者の方が介助している様子を野津先生に見ていただき,一人ひとりにご助言をいただきました。
保護者の方から野津先生へ質問される場面も多々あり,学びの多い研修会となりました。
6月 社会人講師の来校
今年もいろいろな分野の専門家の先生方に、自立活動の授業に参加していただいています。
主に、コミュニケーションに関しては、こころ工房の宮崎美和子氏が来校してくれています。
今回は、小学部の児童の自立活動を参観していただきました。
授業中、宮崎氏にも児童と関わってもらいながら、児童の学びを支援してもらいました。
刺激の種類や回数などを変えることで活動に変化をつけることなど、教員にとっても学ぶことの多い時間となりました。
授業後の振り返りも、とても丁寧にわかりやすくお話いただき、他の教員と共有することができました。
令和3年度 自立活動ミニ研修
昨年度に引き続き、自立活動に関するミニ研修を行っています。
今年は、対象者に違いをつけた「ミニ研修Ⅰ」と「ミニ研修Ⅱ」を企画しています。
自立活動ミニ研修Ⅰは、肢体不自由特別支援学校の勤務が初めての教員と初任者、そして、
教員経験年数が2~5年までの希望者を対象とし、自立活動ミニ研修Ⅱは、新しい内容を学ぶことができるように、対象者を広く設定しています。
今回の自立活動ミニ研修Ⅰでは、摂食嚥下訓練について映像を見ながら学びました。
「食べる機能の発達段階ごとに支援方法は違う。だから、あの子にはこれが大事なんだ!!
それぞれの教員が、いろいろなことを思い浮かべながら学んだことと思います。